うちで飲みませんか?
バーベキューの件があってから、私は完全にユリさんのことを意識し始めていた。
ユリさんの姿が視界に入ると、どうしても気になってしまう。
だけど私の中では葛藤があった。
どうせ報われない恋。
好きになってはいけない。
そうやって気持ちを落ち着かせ、ユリさんの前でも平静を装った。
そんな私の気持ちを知ってか知らずか、ユリさんは以前よりも頻繁に私に話しかけてくるようになった。
ユリさんとのおしゃべりはやっぱり楽しくて、どうでもいい話でよく盛り上がった(笑)
そんなある日、仕事帰りに、会社の人たちと数人で飲みに行くことになった。
最初は楽しいお酒の席だったけど、お酒がすすむうちに、上司への不満が爆発してしまい、私はつい号泣してしまった。(悪酔いですね・・・すみません(^^;)
そのタイミングで、なぜかユリさんが登場。
どうやら酔っぱらった若い男性社員が、一緒に飲もうとユリさんを呼び出していたらしい。
到着して早々、私の泣いている姿を見たユリさんは
「どうしたんですか?」
と驚いた様子だった。
私も、なんでユリさんがいるんだと驚いたけど、涙がなかなか止まらない。
むしろこんな姿を彼女に見られたことで、よけいに泣きたくなった(笑)
でもユリさんが来たおかげで、少し落ち着きを取り戻した私。
冷静になると泣いていた自分が恥ずかしくなったけど、ユリさんもみんなも笑ってくれた。
そして時計の針が深夜0時を回ったころ、私たちは店を出た。
まだまだ飲み足りない様子のメンバーは、二次会に行こうと誘ってきたけど、号泣して顔がパンパンになっていた私はその誘いを断った。
そしたらなぜかユリさんも帰ると言い出した。
ユリさんを呼び出した男性社員は、
「え~! ユリさん途中参加で全然飲んでないでしょ?行こうよ~」
と、しつこく誘っていたけど、
「ん~なんか眠くなっちゃって(笑)」
と、ユリさんは軽くあしらっていた(笑)
そして結局、ユリさんも帰ることに。
他のメンバーはタクシーに乗り込み、私とユリさんはそれを見送った。
だけど・・・・
タクシーを見送って二人きりになると、ユリさんが急に
「木下さん、私やっぱり飲み足りないです」
と言ってきた。
『え?なら、みんなと一緒に行けばよかったじゃん』
と私が言うと、少し気まずそうに笑う彼女。
でもすぐに
「私の家、この近所なんです。うちで飲みませんか?」
と誘ってきた。
私はそのとき、結構酔っぱらっていたけど、ユリさんのこの言葉に一気に酔いが醒めた。
(ユリさんの家で、ふたりきり・・・。)
そう考えるだけで、急にまた胸がドキドキとうるさくなった。
でもなぜか私の口からは
『いや、でも、もうタクシー呼んじゃったし』
そんな言葉が出てきた。
「タクシーでうちに行けばいいじゃないですか」
と、ユリさんは言ってくれたけど、
『いや・・・でも・・・・』
と、歯切れの悪い返事をしてしまう私。
でもこの時、たぶん私の中で、理性と感情が戦っていたのだと思う。
行きたいという感情と、二人きりで飲んだらユリさんへの想いがよけいに強くなってしまうんじゃないかという不安。
もしかしたらユリさんも私と同じ気持ちかもしれないという期待も少しはあったけど、それが違っていたら自分が傷つくだけだ。
それなら最初からある程度、距離をとって付き合う方がいい。
私はそうやって自分の気持ちにブレーキをかけていた。
そして結局、私はユリさんの誘いを断って帰宅した。
ユリさんが誘ってくれたことはものすごく嬉しかったけど、これでいいのだと自分にいいきかせた。
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バーベキュー②
バーベキュー当日。
あいにく空はどんよりと曇っていて、少し肌寒い。
私は急な仕事が入ってしまい、少し遅れて会場に到着すると、おじさん達はすでにお酒片手に盛り上がっていた。
そんな中、少し控えめに座るユリさんの姿。
彼女は私を見つけると、ニコッと笑って軽く手を振った。
会社ではいつも制服を着ているユリさん。
初めて見る彼女の私服姿は、イメージ通り大人っぽくて品がある。
(やっぱりキレイだな~)
私はなんとなく、そんなことを考えていた。
バーベキュー中もお肉を焼いてくれたり、飲み物を配ってくれたり、さりげない気配りをするユリさん。
おじさん達の長~い話もニコニコと聞いていて、おじさん達も満足気な様子(笑)
私もユリさんといろいろおしゃべりができて、楽しい時間を過ごすことができた。
だけど数時間後、そんな盛り上がりに水を差すかのように、パラパラと雨が降ってきてしまった。
おまけに風も強くなってきて、だんだんと寒さを強く感じるように。
(寒いな~・・そろそろお開きにならないかな~)
なんて考えていると、少し離れて座っていたユリさんが私の隣にやって来た。
「寒いですね」
そう言いながら私の隣に腰かけるユリさん。
『寒いよね~、てかこんな時間まで付き合わせちゃってごめんね、大丈夫?』
と言うと、彼女は
「大丈夫ですよ」
とニコッと笑った。
そして次の瞬間、
彼女が急に片腕を開き、羽織っていたストールを半分私の肩にかけてくれた。
つまりは、一つのストールを二人で羽織っている状態に。
この瞬間、私の心臓がドクンとなった。
ユリさんの香りに包まれ、
肩が触れ合うほどの近い距離に急にドキドキする私。
いきなりの事態に半分パニックになりながらも、
『・・ありがとう』
と言うと、ユリさんはただ無言でほほ笑んだ。
(か・・・・かわいい(〃ω〃))
まるで雷に打たれたかのような衝撃だった。
止まらないドキドキ
熱くなる体温
さっきまでの寒さはどこかに吹っ飛び、私の頭はユリさんでいっぱいになった。
そこから私は完全に、ユリさんのことを意識しだした。
そして私の中でのユリさんの存在は、じわじわと大きくなっていく。
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バーベキュー①
ユリさんと仲良くなったものの、私は彼女のことを「かわいい後輩の一人」としか見ていなかった。
でも、あることがきっかけで、私は彼女のことを意識し始める。
それは、私が配属されている部署で、親睦会を兼ねたバーベキューを行うことになったときのこと。部署内では一番下っ端だった私が幹事をすることになっていた。
ユリさんにその話をすると
「いいな~、私も行きたいな~」
と言ってきたので
『え!じゃあおいでよ!部外の人でも大歓迎だよ^ ^』
と返した。
でもこの時、私は内心、これは社交辞令だろうと思っていた。
私たちは仲良くなったといっても社内での話。
私なら、わざわざ休みの日まで会社の人と会いたいとは思わない。
それに私のいる部署は私が唯一の20代(当時)で、あとは40代~50代のベテランぞろい。
しかもほとんどが冴えないおじさん(失礼!)ばっかりで、何の楽しみもないじゃないかと私自身が思っていた(-_-)
すると案の定、ユリさんはこう言った。
「ん~・・・でも私、今月金欠なんですよね~」
定番の断り文句だ。
私は心の中で
(ほら、やっぱり)
と思いながらも、なぜか少しガッカリ。
『お金なら○○部長に出してもらえばいいじゃーん』
と冗談を言ったら、ユリさんも笑っていたけど、そこで話は終わってしまった。
別に期待をしていたわけじゃないけど、ユリさんが来てくれたら少しは楽しくなるのになと思っていた私。
でも無理に誘うのも申し訳ないし、しつこく誘うのはやめといた。
ところがその数日後、ユリさんが私の席までやってきてこう言った。
「バーベキュー、やっぱり私も参加していいですか?」
『・・・・⁈』
まさかの言葉にビックリする私。
『もちろんだよー! ユリさんが来てくれるなんて嬉しいわ~』
そう言うと、彼女は少しはにかんだ笑顔を見せた。
その笑顔がすごくかわいくて、私の胸がキュンとなる。
めんどくさいと思っていたバーベキューが急に待ち遠しくなった(笑)
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仲良くなったきっかけ
ユリさんとの出会いから数ヶ月、私たちは相変わらず、目が合えば会釈をするぐらいの間柄だった。
でもある日、その関係に変化が起きる。
会社の人事異動だ。
この人事異動で、受付だったユリさんが私がいる部署の隣の部署に異動になり、仕事上、何かとユリさんとのやり取りが出てきた。
会話をすることも増え、いつの間にか私たちは普通に話をすようになっていた。
ただ当時の私は、ユリさんへの特別な感情はまだなく、その頃の彼女との思い出や彼女に対する印象は全然覚えていない。
私の中では「同じ会社の子」という認識でしかなく、それ以上でもそれ以下でもない。
会話もいつも仕事に関することだけで、すごく事務的な感じだったと思う。
そんな中、社内の給湯室でたまたまユリさんと二人きりになることがあった。
そこで私たちは初めて仕事以外のたわいもない話をした。
会話の内容はあまり覚えてはいないけど、冗談を言って笑い合ったのを覚えている。
いつもクールなユリさんが冗談を言って笑うのはすごく意外で、普段見ている大人っぽい彼女とは違う一面を見た気がした。
そしてその日をきっかけに、私たちは少しずつ打ち解けていった。
くだらない話で盛り上がったり、仕事の相談をしたり、ユリさんとこんなに話が合うとは思ってもみなかったけど、ユリさんとのおしゃべりはとにかく楽しかった。
だけどまだ、恋というにはほど遠い感じだったと思う。
あの出来事が起こるまでは・・・。
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ふたりの出会い
私とユリさんの出会いは、もう10年ぐらい前のこと。
私が勤めていた会社に、ユリさんが入社してきたのだ。
ユリさんは受付嬢。
私は営業部。
会社に入ると受付に彼女が座っていて、いつも軽く会釈をするぐらいで、会話をすることも、仕事で関わることもほとんどなかった。
初めてユリさんを見たときの印象は
(キレイな子だな)
それぐらいだったと思う。
透き通るような真っ白な肌と、黒いストレートの長い髪。
クールな目元が知性を感じさせ、仕草にも気品がある。
私よりも4つも年下だというのに、彼女はすごく大人びて見えた。
でもその頃はまだ、ユリさんに特別な感情は一切なかった。
そもそも見た目が華やかで女子力高めのユリさんと、化粧っ気もなく男勝りな私はタイプが違う。
そんな彼女と仲良くなって、恋をしてしまうなんて、当時の私は少しも想像していなかった。
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